郷土の特色を生かした体験型観光を促進
──賀陳旦交通部長(大臣)にインタビュー
台湾観光は2011年以降四年連続して百万人以上の成長を見せている。2015年には外国人ツーリストが一千万人を超え、台湾は一千万観光大国の仲間入りを果たした。今年五月に就任した台湾政府交通部の賀陳旦部長(大臣)を訪問し、交通政策の未来と台湾観光の永続的発展への構想をうかがった。以下はその際のお話の内容を編集部で整理したものである。
自然と文化を守って
日本の皆さんこんにちは。ここ数年、来台旅客数は飛躍的成長を続け、2015年には1,043万人に達するとともに、観光外貨収入もNT$4,589億元(約1兆4千億円)と最高を記録しました。台湾はすでに一千万観光大国の一員になっています。しかし量的な成長ばかりを追求していればいいわけではありません。他方で台湾各地に残る自然や文化、人々の触れ合いというものも守り育てていくことも大切です。
台湾は決して広大な土地を擁しているわけではありません。無鉄砲な建設を進めれば環境との衝突を招きます。むしろ人工的なものを減らしていくつもりでいなければならない。そうしてこそ自然や文化が引き立ち、旅行者の歩くスピードもゆっくりしたものになりましょう。例えば観光名所の道路を整備する際にも、車の便利だけでなく、景観というものを考慮しなければなりませんし、道中の体験を大切に、それぞれの土地柄をのんびりと満喫していただけることを念頭に置きたいわけです。
政府として、外国からのお客様のために、安全でフレンドリーな環境を整備するほか、各地域の自然や特色を維持することも大切です。業者の皆さんも、数値や規模だけを追求するのではなく、たとえ旅客数が減っても収益を確保する方策を講ずるべきでしょう。そのためにも体験型観光を軸にした精緻な観光のあり方というものを奨励したいと思います。
観光で地方起こし
現在ツーリストは北部に集中する傾向にあります。これからは旅客を各地に分散させる、地域の個性を宣伝していくことが重要課題となります。大都会はだいたい似通ってきます。地方にこそ台湾ならではの特色があるのではないでしょうか。地域に歴史・伝統・文化が息づいており、そういう意味では地方にこそ国際性があるともいえます。
地方観光の発展は単に地域の経済を活性化させるだけでなく、重要なことは就業の機会を増やし、若者たちに故郷に留まってもらうことです。それでこそ国全体の社会が安定するのではないでしょうか。すべてが台北に集中して、青年が町へ町へと流れ続けると、社会の均衡を保つために、やがて莫大な負担が必要になります。地方体験観光の推奨にはそうした意義があるのです。
台湾政府交通部観光局では「体験観光‧模範村落」をモットーに自治体と提携して地方観光育成の基盤作りに邁進中です。青年のユーターンを促し、国家全体の均衡ある発展が目標です。地方のいろいろな組織でのガイドの育成、各村落の経営能力の向上を支援しつつ、体験コースのラッピングを進め、ネットを運用するなど販売ルートの拡充、宣伝の強化に努めていきたいと思っています。
こうした作業と同時に、生態の維持や観光品質の向上を図りつつ、各地域でのサービス施設の充実や交通網の整備を進めてまいります。
「旅」のIC化へ
地方観光発展の鍵を握るのはインターネットメディアの活用です。いわゆるソシャールメディアは小規模ながら、世界に情報を発信しています。自然な形で消費者の関心を引くことができます。
また観光のインテリジェント化というものを構想しています。Airbnb・Uberが急速発展していますが、それをみるとネット通信と結びつくことで、その向こうに新しい観光のスタイル、意外な異業種との提携が見えてきます。従来の棲み分けは通用しない。まったく新しいチャンスが展開しそうな期待があります。そのあたりは諸外国の対応もぜひ参考にしていかなければなりません。
情報サービスという面では、交通部観光局はすでに「旅行台湾App」を通じ、観光スポット・宿泊・飲食・ビジターセンター・警察・病院・駐車場・ガソリンスタンド・駅・お手洗いその他交通情報を含め、全台湾6万か所の適地性定位サービス(Location Based Service)を開始しています。随時イベントの最新案内も検索もできますし、現在すでに87万人がダウンロードし利用されています。
また自治体とタイアップして「台湾好玩カード」を提供中です。インテリジェントタイプの観光パスポートをイメージしてください。交通機関や飲食・宿泊・レジャー・ショッピング・ツアーなどの情報と優待クーポンがセットになっています。一定期間内に一定区域内で使える「台湾好玩カード」は新しい旅の在り方、ビジネスチャンスを提案するものとして、その成長を注視して参りたいと思います。
2016年度、台湾観光は未知の世界に歩みだしています。これまでも官民合わせた提携がなければ、毎年百万人を超えるという成長は実現不可能でした。交通部として永続的経営の精神に則り、よりフレンドリーな環境が普遍的に存在する台湾観光の未来を築いてまいる所存です。日本の皆さん、美景・美食と人情味、そして旅の感動をこの台湾において十分にご体験ください。