中部「南投県」
高山地帯の文化と自然を訪ねて
文/朱佳雯 写真/宋育玫
南投県は台湾本島の中央部に位置し、平原から高山地帯まで多様な地形を擁する。県内にはタイヤル・セデック・ブヌン・ツォウ・サオといった先住民が集落を形成し、民族の構成も多様。台湾最高峰の玉山のほか、もっとも長い濁水渓の源流や台湾地理中心碑も当県に位置している。凍頂烏龍茶・マコモダケ・青梅・紹興酒・竹工芸品・紙工芸品など名物も豊富だ。南投をじっくり味わうには、自転車がお薦め。日月潭や埔里を巡り、手漉きの工房や遊山茶訪(茶芸センター)を訪ね、大自然の美を満喫したい。
Access:
日月潭水社ビジターセンター、埔里紙教堂は台湾鉄道台中駅か台中高速鉄道駅から台湾好行バス-日月潭線利用。www.taiwantrip.com.tw/Besttour/Info/?id=8
遊山茶訪は台湾鉄道台中駅か台中高速鉄道駅から台湾好行バス-台湾鉄道渓頭線で竹山工業区で下車。www.taiwantrip.com.tw/Besttour/Info/?id=9
BOX#
ボーダーレス光点計画:台湾政府交通部観光局が進める観光プロジェクト。海外からのツーリストを対象に、台湾ならではの魅力を備える「台湾製品」(MIT: Made in Taiwan)と、地域の個性を活性化させた「GIFT聚落」(GIFT: Good Inspiration From Taiwan)を推奨することで、台湾観光の競争力とリピーたーの割合を高めようというもの。
Web:www.gifttaiwan.com
自然スポットへ
自転車ロハスツアー
日月潭は四季を通じて美しく、波光きらめく湖面に映る山々の景観は見飽きない。日月潭の朝はまず湖畔の散策から始まる。深山の霊気を胸いっぱいに吸収したら、クルージングに乗り出そう。湖面からの景観も素晴らしい。最近は自転車で湖畔を巡る人たちも増えてきた。日月潭周遊自転車道は2012年、CNNGOで「世界で最も美しい十大自転車道」の一つに選ばれ、世界各国からツーリスト・サイクリストが集まるようになった。マラソン大会・遠泳大会など著名な年間イベントも少なくない。
台二十一線道を連結する向山自転車道は湖畔に最も近い自転車道。木道部分は柵がないため、安全のため、自転車を下りて歩きたい。
info#自転車で湖を巡る際には水社ビジターセンターが起点になる。周辺には多くの自転車レンタルショップがある。費用は一台200元前後。日月潭周遊は全長約34キロ、所要3-4時間。水社から向山ビジターセンターまでは全長2.5キロ、往復約50分。
向山ビジターセンター
当センターは日月潭涵碧半島の対岸にあり、観光局日月潭国家風景区管理処が設置されている。建物は団紀彦の設計により、2011年に落成。日月潭を抱くイメージで、両サイドをつなぐ35メートルのアーチを持ち、西側部分は向山ビジターセンター、東側部分は日月潭国家風景区管理処となっている。アーチの半開放スペースからは日月潭を一望でき、周囲の景観と見事に融合している。
Add:魚池郷水社村中山路599号
Tel:+886-49-2855668
Open:9:00-17:00
Web:www.sunmoonlake.gov.tw/xiangshan
埔里(プーリー)は台湾本島の中心に位置する。歴史と自然に恵まれた小さな街で、自転車で巡るのが最適。埔里出身の陳巨凱さんが開いた「順騎自然」では半日・一日・一泊二日などさまざまなコースで自転車がレンタルできるほかガイドサービスも受け付けている。今回は東南部を中心に小旅行を体験した。埔里演習林がスタート地点。この演習林は日本時代の林業試験所であり、空襲の際には避難先ともなっていた。続いて、特産の「マコモダケ」の畑と「黒森林」へ。眼前に広がる一面の黒板樹林は、一幅の絵のよう。荘観な地母廟を過ぎると、「哲学の道」と呼ばれる自転車道に入る。竹林に囲まれ、そよ風を受けて快適なツーリングだ。
順騎自然自転車レンタル545BIKE
Add:埔里鎮東栄路119号(埔里バスターミナルから徒歩約5分)
Tel:+886-49-2987735
Open:9:00-17:00
Web:www.545bike.com
P.S.外国人は要パスポート
紙教堂Paper Dome
1995年の阪神大震災後、日本人建築師-坂茂が神戸鷹取教会を再現した紙製のパイプを素材とする教会。分解と移動が可能なため、当時は被災者の心の拠り所となった。2005年、1999年の中部地震で被災した埔里桃米社区に移設され、日台友好の象徵となっている。日中の紙教堂は緑に生え、日が落ちると薄い照明の下、穏やかな雰囲気を醸し出している。
Add:埔里鎮桃米里桃米巷52-12号
Tel:+886-49-2422003(新故郷文教基金会)
Open:9:00-20:00 休日は21:00まで延長
第一水曜定休(国民の祝日は通常営業)
Ticket:大人100元(園区内で80元の消費可)
文化スポットへ
かつての製紙工場をリノベーションした紙匠工房では、職人の林政立さんが紙帽を被り、紙で編んだエプロンを着て、満面の笑みで迎えてくれる。1935年日本人は中国の手漉き技術を改良し埔里に導入。以降、恒吉社区一帯に製紙技術者が多数誕生した。やがて埔里は台湾における製紙の中心地となり、恒吉は「宣紙村」とも呼ばれるようになった。手漉き職人の林政立さんは幼い頃からこの環境に親しみ、日本を含む各国で製紙の歴史を学んだ。いまは故郷に戻り、紙匠工房を設立し、手漉き紙職人の三代目として古法に則った製紙技術を若者に伝えている。
紙匠工房では手漉き製紙を体験しよう。先ずは原料となる樹皮を取り、パルプにして均一に紙漉き枠内に入れて行く。紙は気候と環境により違った風貌が生まれる。林さんは工程を省かず、庭先で原料となる樹から育てて、製紙の過程を詳しく解説することで紙芸文化の奥深さを伝えている。
Add:埔里鎮大城路226巷1号
Tel:+886-937197217
Open:9:00-17:00
Web:www.facebook.com/handmadepapervillage
P.S. 一日五回ガイドツアー。別途紙すき体験実施中
南投県竹山鎮は「台湾烏龍茶の故郷」と呼ばれる。「遊山茶訪」は茶農家の三代目、陳重嘉・葉淑盆夫婦が創業した。先代は1961年より鹿谷郷鳳凰山一帯で自然生態農法を採用し、自然に近い原始の状態で茶葉を栽培してきた。陳さんはさらに「茶道」の奥深さを知ってもらおうと、2008年竹山に(ツーサン)台湾初の茶道文化館「遊山茶訪文化館」を設立した。
「遊山茶訪」は同時に台湾茶のブランドでもある。年間を通じて雲や霧に包まれる高山で栽培した茶はまろやかで甘みがあり、さわやかな香りに満ちている。台湾茶は品種、栽培地の標高、焙煎技術の違いにより、味わいは千変万化だが、中でも喉越しを決めるのは焙煎技術。当館では台湾茶に対する基本的知識を得ることができるほか、実際に焙煎を体験できる。茶葉を籠に入れ、火加減と時間を調整しながら何度も返して自分だけの茶葉を焙煎する。自身焙煎した茶を味わえば、これまでとは全く違った烏龍茶の楽しさを発見できるだろう。
Add:竹山鎮工業区延平路19号
Tel:+886-49-2643919
Open:9:00-17:30
Web:www.yoshantea.com
P.S.団体ガイドは二週間前に予約
国立台湾工芸研究発展センター
国立台湾工芸研究発展中心は南投県草屯鎮にある。工芸文化の研究、工芸技術の保存、優秀な人材の育成、工芸コンテストと展示会の開催を主な目標とする。センター内に台湾工芸文化園が設置されているほか、台北当代工芸設計分館、苗栗工芸園区、九九峰生態芸術園などを各地に展開している。
工芸文化館は、著名な芸術家-楊英風が設計した。工芸と関連のある各種展示が年数回開催される。生活工芸館はもとは草屯商工の校舍だったが、921大地震後に工芸センターに組み入れられ、竹芸、竹彫、藍染、漆芸、金工、ガラス、陶芸という七つの工坊を擁する。また児童遊戯体験・五感体験のコーナーもあり、参観者は五官で工芸の美を感じることができる。地方工芸館では地方工芸作品の展示販売のほか、工芸家の創作パフォーマンスも披露されている。
工芸センターは今年、2015台湾美食展の「食の器」に参加する予定だ。匠の技を暮らしの中に生かすさまざまな試みを提案するプランが準備されている。
Add:草屯鎮中正路573号
Tel:+886-49-2334141
Open:9:00-17:00 月曜定休
Web:www.ntcri.gov.tw
2015台湾美食展「食の器」出展予定:
瓷嬉工坊
東洋の小便小僧-砂糖缶とコーヒークリーム缶セット
目を引く京劇メイクで、西洋の小便小僧のユーモアあふれる形体を生かしている。いたずらっ子らしいキャラクターの個性があふれ、楽しい雰囲気を醸している。
樺泰実業有限公司
福禄富貴
黄金と緑という異色の取り合わせが目を引く。上品なひょうたんの形と図案は吉祥を比喩したもの。手作りの漆器ながら、日常使いこなしたい逸品。
辛可窯
紫金天目斗笠碗
エアアース元素を運用し、鮮やかな紫金釉彩を焼き上げた。銘茶を味わう際に、茶道の雅趣もいっそう引き立ててくれそうだ。
自然スポットへ
南投竹山鎮にある八卦茶園は所在地の地名を軟鞍という。地勢に沿って植えられた茶の木は、外から内へと円を描くように配列され、丘に現れた造型が八卦のようであるため、八卦茶園と称されるようになった。特殊な美景に誘われ多くの広告やドラマがここで撮影されている。ここは標高1,000-1,300メートル。年間を通じて雲や霧に覆われ、雨量豊富で、肥沃な土壌があり、寒暖の差が大きい。そのため、茶葉は厚く柔軟で、甘みが強く香りが優雅で、高山茶独特の風味を備えている。ここでは美景を鑑賞するだけでなく、製茶工房を訪ねて茶葉を購入することもできる。近くには有名な観光スポット「天梯吊橋」がある。民営の小型バスでは地元の人がガイド役を務め、竹山地区の茶業文化について解説してくれる。
Add:竹山鎮五寮巷12-1号
地元ガイド小型バス
+886-910-314901
南投県は台湾で唯一海に面していない県だが、なんといっても山林の景色が魅力だ。なかでも神秘的な「忘憂森林」はかつて杉林渓の原始林だったが、中部大地震で川が塞き止められて、柳杉の林は水に浸かり壊死してしまった。おかげで神祕的な風景が生まれ、格好の撮影スポットになっているのだ。山地の変わりやすい天候もあって、曇天には濃い霧に包まれ、よりいっそう神秘的な雰囲気が高まる。山の麓も入口から忘憂森林までは徒歩で半時間。傾斜も強いため、歩きやすい服装が望ましい。
Add:鹿谷郷内湖村興産路12号
文/鄭靖瑜 写真/陳正国
清境農場‧博望新村
清境(チンチン)は標高1,750メートルにあり、四季を通じて美しい風景が自慢。付近には、清境農場・惠蓀林場・台大梅峰農場といったスポットがあり、中でも清境農場は「霧上桃源」と呼ばれる台湾でもっとも著名な高原だ。園内は羊や牛が放牧され、野菜や花卉が栽培されている。
広い草原で遊ぶかわいい羊たち。休日には決まった時間に羊の毛刈りショーも行われる。欧州の雰囲気たっぷりの「小瑞士花園」には世界各地の草花が植えられ、季節毎に絵のような美しさだ。「挪威森林広場」、「阿爾卑斯双塔」、「落羽松遊歩道」、「主題花園」といった特色のあるエリアももうけられ、自然のロマンを満喫できる。
草原から一つ足をのばせば「博望新村」。この集落は雲南の少数民族の末裔が生活している。内戦のあと、ミャンマーとの国境付近に追い込まれた国軍兵士が半世紀前に家族を連れて台湾に撤退してきたものである。個性的な家並みの中に雲南料理を出す食堂があるほか、少数民族の舞踊パフォーマンスを披露している。
博望新村
Add: 仁愛郷大同村博望巷
Tel:+886-49-2803161(清境観光発展促進会)
清境農場
Add:仁愛郷大同村仁和路170号
Tel:+886-49-2802748
Web:www.cingjing.gov.tw
魯媽媽雲南擺夷餐庁
「魯媽媽雲南擺夷餐庁」は、擺夷族出身の刀玉皎さんが開いた名物食堂。「雲南汽鍋鶏」「香酥包料鶏」「錦灑」といった希少な民族料理にチャレンジできる。
Add:仁愛郷仁和路210之2之1号
Tel:+886-49-2803876
Web:www.lumama.tw
Access:
1.台北バスターミナルから国光客運バスで埔里へ。埔里から南投客運バスに乗り換えて清境へ。
2.台中から南投客運か全航客運バスで埔里(終点)へ。埔里から南投客運バスで清境へ。
合歓山:武嶺‧石門山
清境観光は一泊二日がお薦め。続いてのスポットは「雪郷」の別名で呼ばれる雪景色の名所「合歓山」。鬱蒼と茂った高山鉄杉、白枯木、ニイタカヤマヤダケの大草原が見られ、時には野生の百合と火紅虎杖、小さな草花の花畑も目にできる。
観光にはタクシーが便利。大禹嶺から台14線を進むと台湾のバス道では最高地点の「武嶺」に至る。武嶺は合歓山主峰と東峰の間に鞍部にあり、視野が開け、日の出や雲海を眺めるのに絶好のスポットだ。合歓山山群中でも手軽に登頂できる石門山は登山口から徒歩で半時間。登山道の両側には小阿里山龍膽、玉山ツヅジなど季節に応じて高山植物が咲き誇る。秋冬には黄金色のニイタカヤマヤダケが風に揺れ、ニイタカビャクシンも美しく色づく。頂上から四周を眺めれば、合歓山主峰、合歓山東峰、奇莱山主峰、奇萊山北峰、中央尖山といった山稜が一望でき、ご来迎の聖地となっている。
Access:
1.台中干城駅か埔里から南投客運翠峰方面行きのバスで翠峰へ。翠峰からはタクシー。
2.埔里から南投客運青青草原方面行きのバスで清境農場へ。清境農場からはタクシー。
合歓山でのご来迎
標高三千メートルの合歓山でのご来迎に挑戦。高山の暁の美景、どこまでも広がる雲海は一生の思い出になる。日の出を見るには夜間出発の合歓山日出専用車がお勧め。一人約四百元で04:30-08:30の走行。車内ではガイドによる解説もある。乗車地を決めてネットで予約する。
清境・合歓山観光専用車
www.travelbus.tw
OK bus
www.cingjingbus.tw