台湾道教の神々は、関帝は武帽、玄天上帝は帝帽、媽祖は媽祖帽というように、それぞれ異なる冠(神様の帽子)をかぶっている。頭上に輝く神帽は、人々の神に対する敬虔さの象徴ともいえる。
この「神帽」作りに斬新なアイデアを盛り込み、コレクションとしての芸術性にまで高めた仕事人がいる。この道二十五年という蘇建安さんは、伝統のもつ趣きを大切にしつつ、金線加工、透かし彫り、彫金、二色鍍金、ツヤ消し、窪みなど六つの新しい技法を投入して、神帽の世界に新しい息吹を与え成功した。けばけばしさを抑えて、シンプルさを心がけたところに人気の秘密がある。ユニークな装飾として登場するカニ・イセエビなど海の生物は財運、コウモリは幸福、カメは長寿を象徴する。こうした斬新なデザインは、神様を親しみやすく見せるとともに、いっそうその神秘性を高めている。
ゴージャスな趣き好むコレクターのために、スワロフスキーのクリスタルを使って、四次元のどの角度からでも美しく見える帽子を作ったこともある蘇建安さんは全島の寺廟の要請に応じ、北港の朝天宮、鹿港の天后宮、台南の大天后宮・天公廟・祀典武廟などに彼のオリジナルの冠銀帽を奉納してきた。
そして蘇さんは台湾らしい温もりの中に現代感覚を取り入れるインテリアを続々開発中である。銀帽にあしらわれていた平安葉を使用したペンダントトップ、そして銀帽についた孔雀の羽毛を使ったランプシェードなど、彼の作品には随所に過去の技術が生かされている。我々が伝統から新しい物を学び続ける限り、伝統は廃れることはないと彼は語る。
ランプシェード・スタンド・花器・アクセサリーなど、こうして創作された生活用品を通じて私たちは祖先から伝えられてきた文化の精髄を楽しむことができる。工房では、金工体験教室も併設しており、事前に申し込めば、好みの装飾品を自作できる。
天冠銀帽
若くして公務員の職を辞した蘇建安さんは、金属工芸の製作所に入って、金属工芸の技巧をマスター。銀細工を学んだ兄・蘇啓松さんと共に1998年、「天冠銀帽」工房を設立した。伝統工芸をこよなく愛する蘇建安さんは、神の頭にのせる銀帽にみられる伝統の技法と新感覚のデザインをコラボさせ、実用的な装飾品や器物を作り出してきた。2013年にはパリのルーブル美術館「国際文化遺産展覧会」に出展し注目を浴びた。
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