台北MRT小南門駅周辺には、十九世紀から二十世紀にかけての日本時代の面影が残る。時代を経た建物のなかには、現代にマッチした文化スペースにリニューアルされたものも少なくない。台北の雑踏に疲れたら、小南門あたりを歩いてみるのも一興。世紀を超えて生きてきた文化の風貌と植物の緑に触れて気分をリフレッシュしてみたい。
小南門は台北市の延平南路と愛国西路交差点に位置する。清代の1879年に建造された台北城の城門の一つで、現在国の史跡に指定されている。無骨な他の城門と違って、小南門はその名の通り、小さな楼閣。廟宇のような精緻な作りと彩色が秀麗である。
愛国西路沿いに歩くと、南昌路の国立台湾博物館南門園区に着く。かつての樟脳工場が修復されて、国立博物館の分館となっている。園内には紅楼、小白宮、新築された行政ビルがあり、史跡の修復にまつわる展示がおこなわれている。
南海路に沿ってさらに国立歴史博物館まで歩こう。ここは中国歴代の文物や美術品が展示され、故宮と同様に、中華文明の深奥を知るうえで欠かせないスポットである。博物館の真向いは有名な建国中学。日本時代は「一中」と呼ばれ、多数のエリートを輩出してきた。正門に見える赤レンガが日本時代より残る建物だ。
歴史博物館後方に広がる緑が台北植物園である。南洋植物と生態環境を研究する研究所として設立されたもっとも歴史ある植物公園で、夏になると満開となるハス池が人気。園内の「欽差行台」と呼ばれる建物は、清代から残る福建風の行政機関。端正な造りで威厳が感じられる。現在は植物園の歴史と文化を紹介する常設展示場となっている。
国立台湾博物館南門園区
Add:中正区南昌路一段1号
Tel:+886-2-23973666
Open:
公園部分6:00-22:00
展示館9:30-17:00 月曜休館
国立歴史博物館
Add:中正区南海路49号
Tel:+886-2-23610270
Open:10:00-18:00 月曜休館
台北植物園
Add:中正区南海路53号
Tel:+886-2-23039978
Open:5:30-22:00
欽差行台
Add:中正区南海路53号
Tel:+886-2-23039978
Open:9:00-16:30 月曜休館
戦後経済を支えた偉人館
孫運璿科技‧人文紀念館
孫運璿
1913年 中国山東省に生まれる
1945年 台湾電力公司に入社
1962-1964年 台湾電力公司総経理に就任
1967-1969年 交通部長(交通大臣)に就任
1969-1978年 経済部長に就任
1978-1984年 行政院院長(首相に相当)に就任
1984-2006年 総統府資政に就任
2006年 逝去
植物園横にある「孫運璿科技‧人文紀念館」は、大戦後の台湾復興をけん引した故孫運璿氏の邸宅で、1980年から2006年に亡くなるまでの四半世紀ここで暮らした。八百余坪の敷地には、優美な庭園と和風・洋風の建築物が点在する。
洋館は1980年に孫運璿が移り住む前に建てられ、賓客をもてなしたゲストルームが原状のまま残されている。洋館一階には孫氏が台湾電力公司に入り、戦後五か月の間に復旧させた電力供給システムが紹介されている。交通部長に就任すると、高速道路、桃園国際空港などの重要なインフラ建設をけん引した。経済部長時代は、「新竹サイエンスパーク」の設立を進め、行政院院長時代は、台湾初の国家公園を立ち上げるとともに、米国との断交など困難な時期を舵取りした。展示の数々は、孫氏の職務上の経歴であるのみならず、大戦後から1980年代までの台湾史の縮図でもある。
和風の建物は日本時代に建てられた台湾銀行の宿舎で、往時の暮らしぶりが偲ばれる。最近落成した新館内には、講堂と会議室のほかカフェやギフトショップが設置されている。
Add:中正区重慶南路二段6巷10号
Tel:+886-2-23112940
Open:火曜-日曜日10:00-17:00 月曜休館
Ticket:一般50元
毎日11:00と15:00にガイドによる案内あり、10名以上の団体は二週間前に予約
本格コーヒーを楽しむ
小南門周辺を歩いたら、「台北市で最も雰囲気のあるカフェ」として名高いPELOSOで、至福のコーヒーとスイーツをいただきながら、午後のひと時を過ごしたい。接客と経理は奥さんの「康康」、焙煎担当はご主人の「拾貳」。2013年に賑やかな台北市東区から店を移したのは、付近に高層ビルが少なく、ゆったりとした生活のテンポが夫婦の性格に合うからだ。
PELOSOはイタリア語で、「ふわふわ」という意味。二人の大好きな猫をイメージし、お客さんに心地よく過ごしてほしいという気持ちを込めた。コーヒーを注文する時は、産地とともに、サイフォン、ハンドドリップ、エアロプレスなど入れ方を指定できるのがPELOSOの魅力。
毎週豆を変えて焙煎するので、各地のコーヒー豆を賞味できる。志を同じくする他のカフェと共同して産地から豆を直接購入することで、生産者との対話と共益を大切にしている。Menu選びに困ったら、カウンターで相談すれば、お勧めのコーヒーを教えてくれる。
Add:中正区中華路二段75巷40号
Tel:+886-2-23122955
Open:12:00-21:00(L.O.20:30) 1.11.21.31日定休
予約:不可/カード:不可/サービス料:なし/ミニマムチャージ:一人一品/来店は4人以内をお勧め