11月4日から7日にかけて台北で開催された台湾最大の旅行の祭典「台北国際トラベルフェア」(ITF Taipei)。4日間の入場者数は4年連続で30万人を越え、昨年よりも約1万3千人多い36万1,071人と過去最高を記録した。特に今年は2日目の5日(土)と3日目の6日(日)が天気にも恵まれ、1日の入場者数がそれぞれ10万人を越え、入場規制が行われるほどの盛況ぶりで、日本からは60あまりの企業・団体が出展し、例年通り台北世界貿易センター1館1階の吹き抜けのDエリアに「日本ゾーン」が設けられた。
ご当地ならではをアピール
台湾人の訪日観光客はリピーターも多く、従来の「四季折々の景色」「豊富なグルメ」といった横並びの定番文句では、説得性に欠けるようになってきているようだ。そこで今年はご当地ならではのもののアピールに力を入れているブースが目立った。
ご当地ならではの筆頭株はやはり「祭り」だ。台湾人にとっては新鮮なものも少なくなく、ご当地の文化にも触れることができる。巨大紙風船のパネルが目を引いたのは、東北ブース内にある秋田県特設エリアだ。「秋田県よりも知名度の高い『秋田犬』を前面に押し出し、ちょうど旧暦の小正月に開催される『上桧木内の紙風船上げ』といった秋田ならではの祭を紹介している」(秋田県観光文化スポーツ部観光推進課の新藤匡貴氏)。また、千葉県のブースでは佐倉の秋祭りや成田祇園など、北総四都市(成田、佐倉、佐原、銚子)の魅力を紹介。「千葉に宿泊する台湾のお客様も増えている。今回は千葉ならではの祭を紹介する」(千葉県商工労働部観光誘致促進課の高山裕明氏)。台湾人の一番人気はやはり東京で、成田空港まで飛んでそのまま千葉を素通りして東京へ行ってしまうケースもあるようだが、千葉に立ち寄る人も増えているという。このほか季節の祭りでは、栃木のブースでは足利市の「大藤まつり」、九州のブースでは北九州市の「河内藤園」などを紹介していた。
祭り以外にご当地ならではの体験ができるのがLCCなども就航して直行便が増えた沖縄だ。「11月は台湾の方に沖縄をいろいろと体験していただけるイベントを(台湾で)毎日開催している。ピクニックのイベントもやる」(沖縄観光コンベンションビューロー台北事務所の林秀佳氏)。
それからご当地ならではといえば、伝統工芸も見逃せない。鹿児島県のブースでは和服姿の女性が「薩摩切子」を手にとってその魅力を紹介。「薩摩切子は鹿児島の伝統工芸で作業工程も複雑。それを仙巌園で見学できる」(仙巌園の黄恭恵氏)。仙巌園(旧集成館)は昨年、「明治日本の産業革命遺産」のひとつとして世界遺産に登録されているが、今年は初めて日本ゾーンにそのブースが設けられた。「軍艦島や旧集成館など、多くが九州に集中している。台湾の皆さんにも日本のそうした文化に触れてもらいたい」(一般財団法人産業遺産国民会議の花田紀子氏)
パンフレットからネットへ
ここ数年は台湾人向けの中国語のパンフレットを準備する出展者も増えているが、パンフレットはスペースに限りがある上、写真や文字でしか魅力を伝えられないため、会場で動画などの豊富なコンテンツを準備したネットへ誘導するケースが増えているような印象を受けた。「11月に佐賀熱気球世界選手権が開催され、佐賀バルーンミュージアムもできた。このほか唐津くんちなどの祭や御船山楽園の紅葉など、ネットのコンテンツを充実させているので、会場で誘導している」(一般社団法人佐賀観光連盟誘致推進課の高岡大志氏)。「九州の祭りをサイトでも紹介しているが、交通が不便なところもある。九州の高速道路が定額で乗り放題になる外国人向けの『Kyushu Expressway Pass』が期間限定から通年になったので、二次交通問題が解決できるのでは」(九州観光推進機構海外誘致推進部の安達文俊氏)。会場ではfacebookで「いいね!」すると、グッズがもらえるキャンペーンを行い、ネットへの誘導を促すブースが多かった。
目立った九州からの出展者
熊本地震の影響で一時期、台湾からの観光客が減少していた九州からは7団体が出展。ご当地の魅力をアピールした。「来年から新しい観光列車『かわせみ やませみ』が走るようになる。台湾の皆さんにも是非、乗ってもらいたい」(人吉市役所経済部観光振興課観光振興係の井本浩司氏)。「是非、霧島温泉へお越しください」(霧島市役所商工観光部観光課の宗像茂樹氏)。
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JNTO(日本政府観光局)によると、昨年一年間の台湾からの訪日者数は約358万人、今年は9月末までの9カ月間で約323万人と昨年一年間の数字に迫り、年間で400万人を突破しそうな勢いだ。「台北国際トラベルフェア」に足を運んだ人たちが日本を訪れ、今後も観光を通した日本と台湾の交流が深まっていくことだろう。