ナイトグルメを楽しもう
「深夜食堂」台北版
企画構成/鍾昀彤 文/鍾昀彤・楊善文 写真/宋育玫
早朝の豆乳店から深夜の粥店まで、台北は24 時間美食が楽しめる「眠らない町」。最近は和風の居酒屋や異国情緒あふれるパブなど、夜食の選択肢も広がりつつある。今号は、背景となる歴史や文化に触れながら、台北を代表する「深夜食堂」を一挙にご紹介する。
世界豆漿大王
「豆漿(トウジャン)」とは豆乳のこと。台湾人の朝に欠かせない国民的ドリンクだ。台湾で「豆漿」文化を語る上で外せないのが「永和豆漿」。大戦後、中国東北部から台湾に移り住んだ退役軍人たちが、現在の新北市永和区、中正橋一帯で豆漿・烤焼餅・炸油條といった大陸風の朝食を売り始めた。次第に「永和豆漿」は豆乳を提供する朝食店全般を指すようになり、「永和」の地名を冠する「豆漿店」も全台湾に広がっていった。MRT頂渓駅そばの「世界豆漿大王」も終戦当時創業の一店。屋台から身を起こし、台湾で最初に 24 時間営業を開始した豆乳の有名店だ。
現在当店では数十種の点心メニューをそろえる。
豆漿はアイス・ホットのほか常温も選べる。
現在、店には数十種の点心メニューがそろう。看板の「焼餅油條」は、中国風の揚げパンを、白ごまを散らしうっすらと焼き目をつけたクレープ風の焼餅で巻いたもの。頬張れば口の中に小麦の香りが広がる。もうひとつのおすすめは「蘿蔔絲蛋餅」。美濃産の大根を使用した切り干し大根を「蛋餅(玉子焼き入りクレープ)」で包んだボリュームの一品。ドリンクにはその日に手作りされた豆漿(加糖豆乳)・清漿(無糖豆乳)・米漿(米とピーナッツのドリンク)がおすすめ。豆漿はアイス・ホットのほか常温も選べる。そのほか、小豆餡の豆沙酥・小籠包にもチャレンジしたい。
Add: 新北市永和区永和路 2 段 284 号
Tel: +886-2-8927-0000
Open: 24 時間
無名子清粥小皿料理
物資が乏しかった時代、台湾人は安くて栄養豊富な地瓜粥(いもがゆ)を肉鬆(肉でんぶ)・醬菜(漬物)・菜脯蛋(玉子焼き)などをおかずに常食していた。時代が移り、経済成長期に夜間接待後の締めに粥が利用されるようになったことから、深夜まで営業する粥店が賑わうようになった。「無名子」がある復興南路はかつて「お粥横丁」と呼ばれていたが、いま残るのは三軒のみ。店内は清潔感にあふれ、カウンターに並べられている無数の小皿料理のほか、炒め物や肉類・海鮮までオーダーできる。テーブルに運ばれる人数分の芋粥を主食に、肉鬆(肉でんぶ)、豆棗(豆製品の甘煮)や麵筋(麩の煮物)を加えていただくのが台湾人流の食べ方だ。
Add:台北市大安区復興南路 2 段 146 号
Tel: +886-2-2784-6735
Open: 11:00-未明 3:00
建宏牛肉麺
農業社会の台湾では牛肉を食べる習慣がなかった。戦後大陸から渡来した軍人たちが四川風味の「紅焼牛肉麺」を持ち込んだのが、台湾牛肉麺文化の始まり。「紅焼」とは醤油・八角などがベースの濃厚なスープ。そのほか、塩ベースの透明スープ「清燉」、トマト味の「蕃茄」、激辛タイプの「麻辣」もある。
台北市北門付近の鄭州路は牛肉麺の聖地だったが、いまは数軒のみが残る。24 時間営業の建宏牛肉麺は、紅焼牛肉麺と牛雑麺(ホルモン)・綜合麺がメイン。牛肉麺の肉塊は柔らかく煮込まれ、牛雑麺のホルモンは臭みがない。スープは一般の紅焼牛肉麺よりあっさりしている。麺は細麺・幅広麺から選べ、小皿料理も豊富だ。
Add:台北市萬華区西寧南路 7 号
Tel: +886-2-2371-2747
Open: 24時間
饞食坊
台北 MRT 大安駅 5 番出口そばの路地に、大学の同窓三名が開いた店。一見普通の民家だが、店内は台湾風のノスタルジーに満ちている。多彩な小吃類をベースに台湾各地の食材を駆使した創作料理を提供。さらに深夜11時前後には日替わりメニューがスタンバイ。中でもおすすめは「花椒麺」。コシのある台南關廟麺に自家製の花椒油、胡椒、酢を合わせた、香り高く少し酸味のある辛さが絶妙だ。皮蛋(ピータン)入り玉子焼きは深夜限定メニューで、台湾ビールとの相性もぴったり。同じく深夜限定の「小捲鹹粥」は新鮮なイカ入りの粥で、夜の締めにおすすめ。
Add:台北市信義路 4 段 30 巷 8 弄 13-1 号
Tel:+886-2-2755-5859
Open:18:00-未明 1:00
予約:可/カード:不可/サービス料:無/ミニマムチャージ:無
渣男 Taiwan Bistro
台北市東部「象山」の山裾にたつ「渣男」。創業者の Tony 氏は気の置けない友人たちと飲める快適な空間を目指し、内外装に工夫を凝らした。懐かしい鉄枠の窓、客家伝統花柄の灯籠が店内を彩り、静かに 1990 年代の流行歌が流れるのは 30-40 代のゲストを想定してのこと。カウンターに座り、「滷味拼盤」「猪尾巴」「大腸包小腸」などの小吃が出来上がる様子を見ていると、まるで台湾の屋台にいるかのよう。ビール・ワイン・ウイスキーのほか、薬用酒「維士比(ウイスビー)」にコウリャン酒をあわせるパンチのきいたショット「癡情男子漢」など、個性的なカクテルもそろう。
Add:台北市信義区信義路 5 段 150 巷 315 弄 12 号
Tel:+886-2-2720-9820
Open:17:30-未明 1:30
予約:不可/現金/サービス料:無/ミニマムチャージ:一人ドリンク一杯
天命庵
もとは台湾大学の宿舍だったという、徐州路に鎮座する築 80 年余りの建物に有名デザイナー葉裕清氏が惚れ込みリノベーション。彼は建物との出合いの感動を「天命庵」という名に込めた。外観は和風の佇まいながら、メニューは純台湾モード。豚のホルモンや耳、テールなど、台湾ならではの食材を取り入れた串焼がメイン。シンプルに塩味にこだわるところにシェフの自信があふれる。カラスミや鶏の皮を揚げた「鶏皮仙貝」も台湾ビールにぴったり。
Add:台北市中正区徐州路34号
Tel:+886-2-2322-5642
Open:17:30-24:00・月曜定休
予約:可/カード:可/サービス料:10%/ミニマムチャージ:NT$ 250/満席時は食事時間 1.5hr
老貳階串焼
古いアパートの一室をリニューアル。オーナーの周氏が、アットホームな雰囲気の居酒屋を目指して開業した。趣味で集めた骨董家具を巧みに配してノスタルジックな風情を醸している。店内では和風と台湾風をミックスしたメニューを提供。ボラの一夜干しは大根おろしとともにいただく和風のスタイル。看板の「老貳蛋」は,牛肉でウズラの玉子を巻いて焼き上げ、カツオブシでいただく。「麻醬カリフラワー」や「鶏皮サラダ」は箸休めに最適。ドリンクは台湾ビールのほか、ノンアルコールの「凍檸茶(レモンティー)」が人気。
Add:台北市中山区長安東路 2 段 172 之 1 号 2 階
Tel:+886-2-2752-2297
Open:平日 18:00-未明 1:00
休日 18:00-未明 2:00
予約:可/カード:可/サービス料:10%/ミニマムチャージ:無