トラベル特集――高雄 茂林・六亀(前編)
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/季子弘・張晉瑞
高雄 茂林・六亀
台湾原住民族の里と温泉をめぐる旅
高雄市中心部から車で1時間あまりの高雄市北東部は、中央山脈南麓にあたる山岳地帯。壮麗な高山が連なる土地は、「港町高雄」とは全く異なる風情を見せる。今回旅するのは、台湾原住民族「魯凱族(ルカイ族)」が暮らし、世界的な蝶の越冬地としても知られる茂林(マオリン)、高雄の著名な温泉郷の宝来温泉と不老温泉を抱える六亀(リョウグイ)。まだ知らない、奥深い高雄の魅力を体感しよう。
おすすめコース
1日目:高速鉄道左営駅➡多納➡茂林
2日目:茂林➡不老温泉
3日目:宝来➡六亀➡高速鉄道左営駅
茂林
瑠璃色の蝶が舞う秘境
高雄市東南に位置する茂林区は、区内のほとんどが原始林が多く残る山岳地帯。高山や森林、峡谷、滝などの特殊な地形や野生動物が豊富で、登山、キャンプ、蝶や野鳥の観察など、多彩なアクティビティが楽しめる。主に台湾原住民族「ルカイ族」が暮らしており、各集落を訪れると独特な伝統家屋や工芸品、郷土料理に出合うことができる。多くの蝶が越冬するために飛来する「蝶の谷」としても世界的にも知られている。
Access:
1. 高速鉄道左営駅から高雄客運バス旗美国道10号快捷で「旗山」下車、H31に乗り換え「茂林」または「多納」下車。
2. バスの本数が非常に少ないため、チャーター利用がおすすめ。
高雄客運バスwww.ksbus.com.tw
多納部落
多納石板屋
茂林区最奥の集落「多納部落(Kungadavane)」は、深い山に囲まれ、豊富な水に恵まれた肥沃な土地。ルカイ族が数百年にわたり暮らしてきた、台湾でもっとも古い原住民族の集落のひとつだ。集落には今でも伝統的な石造りのスレート家屋「石板屋」があり、学校や路地の塀などにも、百歩蛇や百合の花、壺、菱形など、ルカイ族の神聖な紋様をみることができる。地元の人たちの暮らしぶりを感じながらゆったり歩いてみよう。
瑪姿餐飲店
多納ではぜひ、原住民族の郷土料理を味わってみよう。豚肉とタロイモの粉を詰めた粟の粽「小米粽」は中華粽に似ており、もっちりした粟がもち米のようで食べやすい。石板で豚肉と玉ねぎを炒めた「石板烤肉」も外せない一品だ。
石板烤肉
小米粽
Add:高雄市茂林区多納里6-1号
Tel:+886-988-063-871
Open:8:00-17:00
一山沐多納咖啡屋
排湾族(パイワン族)のオーナーIsamuさんとルカイ族の夫人Megeさんがこだわりのコーヒーを提供するカフェ。スレート家屋の店内は、伝統的な木彫などが飾られた風情ある佇まい。一番人気のメニューは、茂林特産の愛玉子(オーギョーチ)から作る冷たいゼリー。パイナップルや梅などのフルーツにシロップを合わせてさっぱりといただく。工芸品や土産物の販売もしているので、食事や散策のあとにぜひ立ち寄りたい。
パイナップルと梅がさわやかな「鳳梨梅子愛玉」
愛玉の原料「愛玉子」
Add:高雄市茂林区多納里6-6号
Tel:+886-928-903-240
Open:9:00-17:00
WEB:www.facebook.com/Isamucafe
多納の絶景
高雄市中心部から茂林区に入り、濁口渓沿いに北上していくと、大鷹と壺に護られた橋に行きつく。ここが多納への入口「多納大橋」だ。橋の下には龍の頭に似ていると言われる「龍頭山」があり、橋を渡った「龍頭山遊憩区」は自然歩道ハイキングのベストスポット。遊憩区駐車場から歩道を上がったところにある「龍頭山望夫崖」展望台からは、手前に多納大橋、奥に緑の山々が連なる絶景が見渡せる。
多納大橋
橋の右奥が龍頭山
龍頭山望夫崖から見た多納大橋と多納高吊橋
駐車場方向に戻ると、歩道は「小長城木桟歩道」に続いている。「小長城」という名の通り、山の嶺沿いに続くウッドデッキが万里の長城を思わせる。ここから眺める龍頭山の風景も素晴らしい。ウッドデッキを登りきり、細い道路を下っていくと「多納高吊橋」が見えてくる。吊橋は美雅谷と多納の二つの山を結んでおり、全長232m、高さ103m。百歩蛇や百合の花などのルカイ族の伝統的な文様がカラフルな色彩で描かれている。壮大な景色の前で、山の生命力を感じてみよう。
小長城木桟歩道
多納高吊橋
龍頭山遊憩区
Add:高雄市茂林区
TIME:自然歩道所要時間:往復徒歩1時間半から2時間程度。
茂林の絶景
茂林最高の絶景といえば、なんといっても冬の「紫蝶幽谷」。冬になると美しい紫色に輝く羽をもつ「紫斑蝶(ルリマダラ)」が大武山山麓へ飛来し、100万羽以上とも言われるルリマダラの越冬集団「紫蝶幽谷」を形成する。アメリカ大陸の「帝王斑蝶谷」と並び世界にわずか2か所しかない越冬型の蝶の谷は「ミシュラングリーンガイド台湾」で3つ星に選ばれた台湾随一のエコツアースポット。毎年11月から翌年3月までのシーズン中は、茂林の蝶を目指して台湾国内外から多くの観光客が訪れる。
ルリマダラ(写真/George Han)
木の葉のように見えるのはすべてルリマダラ
ルリマダラ(写真/George Han)
茂林生態公園・賞蝶歩道は手軽なルリマダラ鑑賞スポット
生態公園から南に車で4分ほどの濁口渓にかかる「情人谷吊橋」と、吊橋から1kmほど奥の「情人谷瀑布」にも足をのばしたい。「情人谷」はルカイ族の言葉で「吐抜魯(Tbaru)」と言い、「美しい深潭」という意味を持つ。山々と渓谷が織りなす絶景を楽しみながら吊橋を渡り、緑に包まれた滝を訪ねよう。緑に囲まれた滝の前に立ち水音に耳を澄ませると、心身ともにリラックスできる。
情人谷吊橋
情人谷瀑布(写真/George Han)
茂林生態公園(紫蝶幽谷)
ADD:高雄市茂林区茂林里
※蝶を観察するベストな時間帯は11月から3月の午前中。
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。