候硐駅は新北市瑞芳区の光復里にある台湾鉄道宜蘭線の駅で、瑞芳駅同様、平渓線の主要な始発駅。日本時代から1970年代にかけて、光復里は炭鉱で賑わった。しかし、鉱業が廃れるに連れて人口が流出し、徐々に歴史の表舞台から姿を消しつつあった。
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ところが2009年、あるネコ好きが、ここにたくさんのネコが暮らしており、長い間住民達と良い関係を築いていることを発見した。これがきっかけで光復里は人々に注目されるようになり、「ネコ村」と呼ばれるようになった。今年3月30日からは、人もネコも通れる「ネコ橋」が開通し、車内のつり革、座席カバーにネコのイラストが書かれた台湾初のネコバス「瑞芳─猴硐808」も運行を開始。猴硐駅では終日ネコ音楽が流れる。今後もより多くのネコ好きを惹きつけ、ネコ派の聖地になるだろう。
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「猴硐」と「候硐」
光復里一帯はかつて「猴洞」と呼ばれたが、後に「候硐」に改名されたため、駅名はこれを使っている。後に「猴硐」に変えられたが、駅名は変えなかったため、今では地名は「猴硐」で駅名は「候硐」となっている。
アクセス:
台湾鉄道台北駅から区間車、莒光号で東部幹線方向に向かい候硐駅下車(乗車時間約1時間)
※悠遊カード使用可
時刻表と料金は台湾鉄路のHP:http://twtraffic.tra.gov.tw/twrail/をご参照ください。
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猴硐の過去と現在
清代、猴硐(ホウトン)辺りでは山洞にサルの大群が暮らしていたため、「猴洞」と呼ばれるようになった。基隆鉄道敷設時の1890年金鉱が発見され、鉱山労働者が流入したが、坑道に水が出るのを恐れる鉱山の性質上、三水偏の「洞」を発音が似た「硐」に変えるようになった。
日本時代、猴硐では石炭の採掘が始まり、「瑞三鉱業」はかつて台湾最大の炭鉱だった。戦後の1960-70年代が猴硐の黄金時代で、多い時には六千人余りがこの地に居住した。しかし、1990年に炭鉱が生産を停止後は人口が流出し、人々の記憶から忘れ去られるようになり、「瑞三鉱業」が残した遺物だけが往時の繁栄を忍ばせている。
実は、猴硐とネコとのつながりも鉱業と関係がある。ここのネコ達は、かつて猴硐光復里に住んだ鉱山労働者がネズミ避けのために飼っていたネコの子孫なのだ。それが2009年、ネコ好きのブログ「ネコ博士夫人」とネコ好きのボランティアが「ネコ村」に関わるようになり、ワクチン接種、避妊によるネコの個体数コントロール、清掃などが行われ、世界中からネコ好きが集まる「ネコ村」として猴硐は生まれ変わった。
猴硐の発展史
1860年
清代の将軍劉明燈が猴硐を通り掛かった際、石壁に刻んだ「金字碑」が残っている。国家三級史跡。
1890年
金鉱が発見され、鉱山労働者が猴硐に流入。
1920年
瑞芳から猴硐までの鉄道が開通。炭鉱の大規模採掘が始まる。
1934年
「瑞三鉱業」成立。猴硐は台湾最大の炭鉱地区となる。
1990年
石炭産業が廃れ、「瑞三鉱業」は生産を停止。
2009年
ネコ好きが活動を開始。住民と協力してコミュニティを運営。
2010年
市政府により、歴史文化を保存する「猴硐炭鉱博物園区」が開園。
2013年
ネコ橋、瑞芳と猴硐を往復する「ネコバス」の運用が開始。
スポットマップ
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猴硐神社
日本時代に建てられ、天照大神を祀っていた。鳥居等一部を残すのみだが、猴硐を眺めるには最高のスポット。
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選炭施設
1920年に竣工した、当時の台湾最先端の選炭施設。荒れ果ててはいるが、炭鉱業の隆盛を偲ぶことができる。
石炭運搬橋
基隆河を跨ぐ高くそびえるアーチ橋。石炭を運ぶ他に、駅への出入り通路として使われた。
願景館
選炭施設倉庫を改造。映像と文字で炭鉱業の歴史を記す。内部には「ネコ村カフェ」もある。
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トラベルインフォステーション
「炭場事務所」とも呼ばれた、かつての選炭施設事務所。歴史建築に指定されており、現在はガイドマップ、ガイドビデオ、旅行情報を提供する。
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プチトリップ 猫の町散策
猴硐では、駅正面の「猴硐炭鉱博物園区」見学はもちろん、「ネコ村」も必見のスポット。「ネコ村」と呼ばれる光復里では、300人余りの住民に対して、百匹近くのネコが暮らしている。「ネコ村」は駅後方の山の斜面にあり、駅からネコ橋を渡れば到着。手書きの「ネコ村散歩地図」と注意事項が目に入るだろう。
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猴硐は湿度が高く気温が低いため、実はネコ向きの気候ではない。けれどもネコ達は、住民とボランティアに世話され、不定期で診療、ワクチン接種を受けている。ボランティアは餌やりも行っており、ここにはネコ専用の「ネコハウス」、病気ネコの療養施設まである。「ネコ村」では至る所で座ったり、寝そべったりするネコ達が見られ、なんとものんびりした雰囲気。ここのネコ達は人懐こいので、最高の被写体でもある。
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ネコ橋
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新北市政府は八か月余りの月日と千八百万元を費やし、猴硐駅の錆びた陸橋を、人とネコ共用のネコ橋に改装した。ネコ橋にはネコ専用通路とネコのジャンプ台があり、ネコと至近距離で接することができる。
Café in 猫の町
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217咖啡
陸橋を通り「ネコ村」に入ったら、左側の階段を上がろう。そこは眺めが自慢の「217咖啡」。店主の陳錫川氏は生粋の猴硐っ子。20歳で離れた故郷に六十を過ぎてから戻ってきた。その頃、猴硐は過疎化が深刻だった。故郷の復興の使命を感じた陳氏は十匹余りのネコを世話している。カフェのオープンはちょっとした縁があってのことだが、今年の4月17日で満3周年となる「217咖啡」は、猴硐ではかなり知られた存在だ。ドリンク類はコーヒーに加え、ユニークな「猫桔茶」もあり、軽い食事も楽しめる。また、トラベルインフォを提供するほか、アート作品の展示も近く始めるという。
オーナー
陳錫川さん
Add:新北市瑞芳区柴寮路217号
Tel:0932-336-313
Open:水曜~月曜 10:30-18:00(火曜定休)
Empress Gallery (Catwalk 219)
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「Empress Gallery」は愛猫を記念する施設。愛猫を亡くした悲しみを癒すため猴硐に通っていた医師と教授が、ここの環境に魅せられ、2012年5月にギャラリーを併設した複合カフェをオープンさせた。店内には「看板ネコ」が数匹。また、猫の療養施設もあり、怪我をしたり病気になったりしたネコが住んでいる。ここでは、シンプルなドリンクを出すほか、ネコ関連の雑貨も扱う。ギャラリーでは現在、日本のイラストレーターPEPE SHIMADAの作品を展示し、壁面にはPEPE作の「ネコ橋運用を祝うイラスト」が掛かる。
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Add:新北市瑞芳区柴寮路219号
Tel:02-2706-6565
Web:https://www.facebook.com/houtong.empress
Open:平日12:00-17:30
週末 10:00-17:30(火曜定休)
お休みにゃん