「世界の人たちにこの台湾を見ていただきたい」
──台湾政府交通部「陳建宇」部長に独占インタビュー
台湾へ入国した旅客は2014年度991万人に達した。一千万人の観光大国まで秒読み態勢だ。ニューヨークタイムスは台湾を必ず訪れたいと場所と報じ、マスターカードが発表した「世界ベスト観光都市」で、台北は132都市のうち第十五位にランクされた。また「Lonely Planet」が台湾を「Best value destinations for 2015」の第八位にランクインさせるなど、世界の主要メディアが台湾観光の競争力に注目し始めている。今年一月末に就任したばかりの台湾政府交通部(交通省)陳建宇部長(大臣)に独占インタビューし、台湾観光の現状と未来について語っていただいた。以下はその内容を整理したもので、文責は編集部にある。
シニアにも優しい安全な環境
日本の皆さんこんにちは。おかげさまで、来台旅客数は近年飛躍的に成長を続けています。現在我々がなすべき業務の重点は「品質の向上」「安全性の重視」「隙間のない交通システムの構築」にあると考えています。
2014年度、海外から台湾を訪れた旅客は23.6%の成長をみました。これは世界主要地区の中でトップの成績であり、旅客数は一千万人に迫ろうとしています。こうした時期だからこそ、観光の品質を確保し、そのレベルアップを進めて、より経済力のある旅客に足を運んでいただかなければなりません。
そのためにも治安と交通施設の安全性は大切です。米国のLifestyle9がFBIのデータを紹介していますが、台湾は世界でもっとも治安のいい地区の第二位にランクされています。台湾は個人でも安心して旅ができる渡航先として公認されているのです。台湾政府交通部もまた2015年を「安全年」と位置づけ、空・陸・海の各交通施設をソフトとハードの両面から管理を強化し、ツーリストの安全第一に努めたいと思います。
そして「隙間のない交通網」の構築も重要課題です。交通部として、個人旅行やバックパッカーを対象にハイテクを利用したインテリジェンスな観光を目指しています。例えば、ツーリストはネットを通じて台湾観光や交通についてのインフォメーションを入手するほか、空港に着くと同時に、台湾での全行程のチケットや交通手段、飲食・宿泊・ショッピングの手配ができるという仕組みです。まさに隙間のない観光インフォメーションサービスネットと申せましょう。
多様な商品の開発
観光業は複数の領域にまたがる産業です。資源を整合して多様な商品を開発していくことが重要です。交通部はそうした場合、政府の各部会や地方自治体が集うのひとつのセンターにならなければなりません。例えば、農業委員会が観光農漁業を進める。衛生福祉部門が医療観光をPRする。経済部門が美食の国際化や会議展示産業の発展を目指す、といったこともあるでしょう。また実際に観光局では地方の特色を一堂に集めて「台湾観光カレンダー」を制作したりしています。観光局は世界に向けて開いた台湾の窓なのです。
近年アジアではクルーズ市場が急成長しており、主要港ではクルーズの寄港をめぐる争奪戦が激化しています。台湾は北に行けば日本・韓国および中国大陸北方を結ぶ東北アジア航路、南に行けば香港・ベトナム・フィリピンおよび中国大陸南方を結ぶ東南アジア航路というふうに、アジア航路の中心に位置しています。きわめて優位なロケーションにあるわけです。実際、2014年度台湾に立ち寄ったクルーズ船は518隻と前年より145隻も増えています。旅客人数でいえば72万人に達し、台湾観光の未来の重点であることがわかっていただけると思います。
クルーズ観光を歓迎するために、交通部では施設の拡充に努めています。高雄港を例にすれば、2014年末に9号ハーバーの通関施設をリニューアルし機能性をレベルアップさせました。時間当たり1500名の旅客が通関できるようになっています。さらに高雄港の旅客ビルは2017年末の落成予定で、完成すると時間当たり2500名の通関が可能です。すなわち22万トン級、定員6000人のクルーズ船を受け入れることができるのです。また世界第二のクルーズ会社「Royal Caribbean Cruises Ltd.」と提携の覚書を交わし、澎湖島を基地としたクルーズを開発していく計画を進めています。
フレンドリーな観光環境
交通部では観光環境の改善にも取り組んでいます。例えば、バリアフリー化にみられるシニアを意識したよりフレンドリーな環境の構築です。台湾自身も高齢化が進んでいます。近隣諸国にも大勢のシニア群がいらっしゃる。ぜひ躊躇なく足を運んでいただきたい。観光局が率先して各観光スポットのバリアフリー化を進める一方、宿泊業者にもバリアフリーの環境を作っていただけるようお助けをする。ロハス・養生・保健といったテーマの観光コースを設定することも大切でしょう。
交通部観光局は2010年より「台湾好行」バスを立ち上げて参りました。今では台湾各地に路線網が構築され、鉄道の駅と各スポットを結ぶバス路線は計33本にのぼり、すでに860万人もの利用者を得ています。公共交通機関の推奨は低炭素化の政策にも合致するものです。「台湾好行」では三種の「台湾周遊券」などいろいろなパックチケットを売り出して好評を得ています。高速鉄道・台湾鉄道、そして高雄と台北の交通システムを自在に活用して、自由闊達な台湾旅行をお楽しみいただければ、交通大臣としてこれに優る誇りはございません。
業界の皆様のご支援ご協力を賜って毎年百万人ずつという急成長を遂げて参りました。2015年、台湾は一千万観光大国へと大きな一歩を進めます。交通部は永続的な経営精神に則り、よりフレンドリーな観光環境の実現に邁進する所存です。日本の友人の皆さん、ぜひ安心して足をお運びいただき、台湾の美景・美食、そして人情味を充分に味わってください。何卒よろしくお願い申し上げます。