少し前のことですが、台湾観光協会が主催した台湾美食展を訪れる機会がありました。美食展という名前の通り、台湾の名店が集まるフードコートで料理を味わうことができたり、有名なシェフによる料理教室が開かれたりと、台湾の人への食へのあくなき欲求を強く感じたイベントでした。その中でもひときわ注目を集めたのが台湾鉄路管理局とJR東日本、西武鉄道、京浜急行電鉄がコラボレーションした鐵路便當(駅弁)コーナーでした。なかでも、JR東日本の北陸新幹線E7系のお弁当箱に入った駅弁はイベントが始まるやいなや行列ができ、あっという間に準備した50個が売り切れてしまい、そのことが全国ニュースで配信されるほど注目と人気を集めました。これほど駅弁が人気を集める理由のひとつには台湾に駅弁という文化がしっかりと根付いているということがあげられるでしょう。
台湾の駅弁は日本統治時代に始まるといわれ、現在でも大きめの駅には必ずといっていいほど駅弁屋さんがあるほか、新幹線や在来線の優等列車などでは車内販売でも駅弁が売られています。日本ではあまり見られなくなった立ち売りがある駅もあり、売り子さんの「べんと~」というかけ声は旅情を誘います。値段は種類によって多少異なりますが、日本円で300円~400円程度のものが多く、リーズナブルに駅弁を楽しむことができます。日本の駅弁は冷めた状態でも美味しく食べられるよう工夫がされていますが、台湾の駅弁はあたたかい状態で販売されており、台湾の人のあつあつできたてというおいしさへのこだわりを感じることができます。
私の個人的なおすすめは、米どころの台東県で売られている池上弁当です。池上駅ホームの売り子さんから購入する場合は、停車時間が短いので、電話予約をするのがおすすめです。ホームでのスリルを味わいたい方は売り子さんのいることが多い台東寄りの車両にあらかじめ移動しておくとよいでしょう。また、台湾中部・集集線の終点車埕駅近くで購入できる木桶便當は文字通り小さい木桶に入った弁当で、お弁当を食べ終わった後の木桶は楽しい旅行の思い出になることでしょう。
今度の台湾旅行は、のんびり駅弁を片手にぶらり途中下車なんていかがでしょうか。天高く胖太子肥ゆる候、今年も食欲の秋に向けて出発進行です。