効率を追求する時代にあって、スピーディーなデジタルプリントの利便性が活版技術をまたたくうちに一掃してしまった。活字を選び、植字し、インキで刷りあげる。その手仕事の良さを見直そうとしているのが、RickとKimという二人のデザイナーだ。
彼らは過去への郷愁と現代のクリエイティブをコラボさせて、「モノ」のもつ機能と意義に新たに解釈を加え、活版印刷を個人用に縮小し、手動で印刷する活字スタンプを生み出したのだ。ユーザーは手軽に伝統の技をマスターし、質感の高いオリジナルの名刺を創造することができる。
大量生産の概念の反し、少量で、しかも原始的な方法で製作する。銅板材を人の手でハンダ着け、研磨、組合せ、活字を置く組版ステッキを時間をかけて作り出す。人体に直接触れる持ち手部分は、安定性が高い鉄杉、梨花といった木材を用い、ベテラン職人にオーダーしている。こうして、それぞれ表情が違い、美しい曲線を持つ持ち手が生まれる。また、自然の色合いを大切にし、金属と原木の色彩を優雅に組み合わせる。
活字スタンプを買ったら、活字を選択し、植字し、インクつけて押すという過程を繰り返す。あたかも伝統の活版印刷の復活である。かつてのアナログライフ、手作りの良さを再確認してみたい。
二人組デザイナーRickとKimは2013年に「RisK STUDIO」を設立した。二人の名前の頭文字を取り、同時に単語「risk」をうまく組み合わせ、実験とチャレンジの精神を表現した。Kimはグラフィックデザイン出身で、スタジオでは主にビジュアルとクリエイティブに集中し、工業デザインを学んだRickは、製品の成型を担当する。一人は奔放な感性と思考を持ち、もう一人は理知的で現実的。こうして互いに分業し補い合い、面白みと深みのある製品を形にしてきた。「設計は重い負担」とRickはいう。自社製品の開発は一般デザイナーの枠を超えてしまう。どれも、生活経験から出発し、工業デザインの生産効率を重視する概念を抜け出し、旧時代のゆっくりとした良さを持つ手作り製作に取り組む。台湾ベテラン職人と力を合わせて忍耐力で、時間の経過に埋もれない製品を作り出す。
http://rickiskim.wordpress.com/
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